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一週間に15コマ位、
二年生と三年生を受け持っていた。

クラスによっては最初から静かに授業を進めることが出来たが、
いくつかのクラスは、どの教師も手をこまねいているようだった。

教師に向かって椅子を投げ、机を蹴とばした生徒に対し、
どう叱れば良いのか分からないと言った先生がいたとかで
呆れたという声も聞いた。

ある日授業が終わって教室を出た時のこと。
狭い廊下で、後退りしながら一人の女生徒が私にドンとぶつかって来た。

初めて見かけるその女生徒が、若い男の先生のワイシャツに
缶コーヒーのコーヒーをぶちまけ、逃げる所だった。

瞬間に何があったかそれなりに呑み込んだ私は、
彼女をそのまま抱き、耳元で「あやまりなさい」と小声で言った。

その声に、私を振り返りながら見上げた彼女と目が合った。
(何とまあ綺麗な少女だろうか…透き通るような白い顔に濃い瞳が輝いていて唇は紅く…)

緊急場面なのに全然違うことを考えている自分にも驚くが、
少女の方も、そんな大胆な事を仕出かした割には眉ひとつしかめていないのだった。

そんな激しく悲しい状況と裏腹の可憐な美しさを前に、もう一度言った。
とにかく、いいから謝んなさいと。。彼女は不敵な笑みを浮かべて何も答えなかった。

振り返るに、
寸前に「オマエのせいで退学になったんだ!!」とか言っていた。。

その先生は私が彼女をかくまう様に抱いているために、
「何をー!」と言ったまま近寄れずにいた。
他にも下校の生徒が教室から廊下に溢れている時間帯だった。

彼女はするりと私の腕の中から逃げると、
追いかけようとする男先生に、何か捨て台詞を残し足早に去って行った。

ほんの一分位の間のでき事だった。

もし私が出くわさなかったら、その神経質な先生は彼女に暴力を振るっていただろうと、
お陰で助かったのだと、翌日の職員室はそんな話で持ち切りだった。
当事者の彼を見るとうつむいていた。私には以後もひと言もなかった。

付き合っていた彼氏がその先生に刃向ったらしく、退学処分後の出来事だった。
彼女もあのまま退学してしまったと、後になって聞いた。

今は何処かでちゃんと暮らしているだろうか。

女子生徒の割合が2割ほどのその学校には、
まるでジャニーズのようだと思わせる、美男子生徒がウヨウヨしていた。


つづく


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三年生は三クラスで
どのクラスの生徒も大概は落ち着いていた。
一クラスの人数も少なかった。

騒がしくはないが、こちらの目を盗んで音楽を聴いているなと思って近寄ると、
「先生ハマショーって知ってる?これ、聴いてみて。」と悪びれずにイヤホンを
私に差し出したりするのだが、

そんな時居丈高に叱ってもしょうがない。。望み通りに聴きはしないが、
「あぁそう?」っと笑った後にたしなめておく。

授業にある意味付いて行けないか、何らかの事情で辞めていく生徒も多く、
三年に進級する頃には自然と問題のない生徒が残っていたのだろう。

渡される名簿には、退学を意味する横線が何本も引かれていたし、
途中から私が引くこともあった。

教師の方が悲鳴を上げて辞めて行く例もあったと聞いた。

あるクラスには授業中に出歩かなければ気の済まない
多動児と呼んでいいのか分からないが、そんな男子がいた。
それも素早く大股で歩いて教室内を行ったり来たりしながら、言葉を発するのだ。

しかしクラスの誰もそれをとがめない。慣れっこになっているようだ。
だから私が座らせようとして注意をすれば、返ってその声の方が邪魔になると思い、
そのまま歩かせておいた。

おかしな景色ではあったが、特に害はないのだった。

そんなクラス仲間に対して、冷やかすのでなく温かく接する、大人びた物腰の
男子生徒がいた。

彼は周りの女子の乙女心を引き付けていたようだ。
容姿だけでなく、そんな誰にでも優しい性格も人気の要素なのだなと感じた。

もう直ぐ授業が始まるという時、目の前の私に構わず、
一人の女子生徒がその人気者の行く手を遮り、やみ雲に片手を出す。

「ねぇ、どの指か選んで!」、、急いでいる彼は嫌がりもせず、
一本の指をチョンと触って席へと去る。

途端にしゅんとする女子。。どうやら指によって意味があり、
例えば友人や妹として思っている指とか、恋人として思っている指などの
占いのような遊びの一種だったらしい。

彼女のがっかり感を目の前にして、ハハ~ンと読めたのだった。

(まあね、貴女は姉御肌だから、今の彼には合わないだけで、
貴女には貴女の良さが充分あるのよ…と心の中で励ましていた。可愛いもんだ。)

その、人気者の彼は、学校をよく休んでいたが、
私の授業には遅刻はしても一度も休まず出て来ていたのだった。

しかし、そういう生徒が他にもいたことを、ずっと後になって知ることになる。

まさか、二年生のその男子が、後にテレビや映画の主役級の役者になるとは

夢にも思っていなかった。


つづく


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