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「ここよ!」と先輩は明るく手を挙げた。

私の中では、昨日の午後のメモ用紙を見た時から

こうなることは分かっていたのだった。


だが先輩にはそんなことはおくびにも出せない。

「あらー、そういう事ですか(笑)」と白々しい演技をしたのだったが、

バレても仕方がないなと思っていた。

しかし意外にも先輩は、

「ごめんなさいね。彼のリクエストなの。」と言って、すまなそうに微笑んだ。


少し息を弾ませながら、「いやー待たせちゃったかな?ゴメンゴメン。」

などと言って、私に人懐っこい笑顔を向けてくれた。

「この間はどうも。」と。


彼は、今日の私の清楚な服装を確認するように見て言う。

「台湾料理と思ったけど、それは次にしよう。」


私たち三人はタクシーを拾い、銀座へと向かった。


その時まだ私には、怖くて聞けないことがあった。

彼が結婚しているかいないかだ。

でも知り合ったばかりでそんなこと聞くなんて変だ。

私が考え過ぎなのだ。例え既婚者だろうと、今は関係ない事だった。

先輩とその知り合いの関係で充分ではないかと思うことにした。

指輪は、していなかった。


寿司屋に入ると、彼を真ん中にしてカウンターに座った。

彼は慣れた感じで先輩と話していた。私の知らない人達の話もあって、

ちょっと淋しい気もしたが、仕方のない事だった。

彼は、そんな私が入れない話をした後は、気にして時々話しかけてくれたりした。

繊細で優しい人だった。


そこを出ると、彼が知っているバーに行こうということになった。

8時半、まだ早い時間で私も付いて行くと返事した。

すると、先輩が彼を呼び寄せるようにして、何か話している。


私からもちょっと離れてあげた。


二人の短い会話の後、笑いながら一緒になって歩く。

裏通りのビルの3階にあるバーに入った。


つづく




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