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ある日、

私は男女二人の秘密の会話を耳にした。


そこは広い倶楽部のカウンター。

グランドピアノの形にカットされたカウンターの隅っこだった。


その真ん中に置かれた大きな花瓶と花々の陰に隠れて座った男に、

少し遅れてやって来て、

脇に立ったまま右手を男の肩に掛けた女、27才が

鼻に掛かった声で問う。

「じゃ、もう会えないの?」

男、至って普通に、

「そんなことないさー。会えるさー。」と

政治家らしく明快に答える。

常に忙しい上に、また国会が始まるか何かで心配し、女が尋ねたのだ。


「お忍び」という言葉がピッタリ来る彼が一人の時は、

その店のその席へ素早くサッと座るのだった。

大きな花瓶は身を隠すのに都合が良かった。

そこからだと、店全体も見渡せる。


女は「ある機関」で働いていた。

スーツ姿にリュックを背負い、スニーカーを履いた、

若々しいカジュアルな出で立ちである。


二人は仕事上で知り合った。

歳の差を埋めたのは、お互い相手に興味を持ったから。

仕事の上での人脈作りも、女にとっては有利だったに違いない。


私はその花瓶のこっち側に居て、二人は私に気付かなかったか、

あるいは聞こえないと思ったらしかった。


つづく

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私とその「花瓶男」は顔見知りである。


その店でしか会わない顔見知りであった。


彼は、報道で知るよりも非常に気さくな男だった。

会った人の誰もがファンになってしまう。そんな徳を備えていた。

テレビに映ると何とも損な悪役顔だったが。。


先に、

今は無きその倶楽部について少し話そう。 


その店は、

戦後のフィクサーと言われたある男が、

いわゆる「外に作った女」が経営していたクラブだった。

彼女は「女傑」と呼ばれるに相応しい資質と風貌を備えていた。



集まる客筋が一般的ではないためか、当時の週刊誌の人気コラムの

「倶楽部欄」に載せたいとオファーが来ていたが、

断り続けていたのだった。

宣伝され、これ以上客を増やす必要はないのと、客のプライバシーが

守られなくなるというのが理由だと思う。

知る人ぞ知る。

そういう倶楽部だった。


そのフィクサーの息子が客として来ることもあった。


ある時彼は冗談交じりに女傑に言った。

「世が世なら僕のお母さんですね。」と。

そう言われ、

満足そうに笑う女傑の指には、そのフィクサーからもらった

大粒のスターサファイアが鈍い光を放っていた。



ある目白の政治家の葬儀の際、外にできた息子二人が参列しようとしたら、

娘がそれを断った。

母が可哀想だと思ったからだ。

これに比べれば、父親の外の女性に対してそう言った彼は

無頓着なのか、それともそんなに特別な事だと思っていないのか。

ま、大らかである。





つづく



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